根本裕子&是恒さくら ミニインタビュー「山形藝術界隈とは?」

写真: Yuko NEMOTO + halken LLP

 

今年は大槌秀樹 、是恒さくら 、根本裕子 、3人の「山形藝術界隈」の作家がCygで展覧会を開催。

「山形藝術界隈」とは何なのか?お二人に聞いてみました。

(このミニインタビューは、情報紙「Cyg INFO」2018年9月発行号に掲載されたものです。)

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Cyg 山形藝術界隈は、どのようなグループなのでしょう?

根本 「山形ビエンナーレ2016」期間中に開催されたアートの市「芸術界隈」から派生した芸術運動体です。絵画・音楽・パフォーマンスなど表現方法の異なる地方在住の若手作家が中心となり活動しています。

 

Cyg 山形藝術界隈としてはどのような活動をしているので しょうか?
是恒 これまでの主な活動としては、2017年から自主企画展示を始め、その後県内外でいくつもの企画展示に参加してきました。

2018年から「石巻のキワマリ荘」を運営するアーティストの有馬かおるさんにお声がけをいただいて、「年間山形藝術界隈」とし て1年間、参加作家の組み合わせを変えながら連続企画展を開催しています。

 

Cyg ファンディングプロジェクト山形藝術界隈友の会についても教えていただけますか?

是恒 アーティストは自身の作品を売買することで経済的自立を果たしますが、地方においてはアート作品が売買される機会自体が 少なく、それが困難ではないか?ともいえます。山形藝術界隈では、今後の活動を持続的なものにするためファ ンディングによる経済的自立を目指したいと考えました。

 

 

Cyg 5-6月の大槌さんの展覧会では、根本さんがパフォーマンスを行う大槌さんをモチーフに陶彫刻を制作していましたね。

根本 もともと私は小さい陶のダビデ像のシリーズなどを 制作していました。友人である大槌さんが彼の作品の中でダビデ像など彫刻像を演じ始めて、それを私が立体に置き換えた陶彫刻を作ることがおもしろいと思ったんです。


 

(写真)大槌秀樹「神々の撮影」コラボレーションの様子。ショップコーナーにて「大槌秀樹氏による円盤投げ像」「大槌秀樹氏によるバッカス像」などを展示・販売。
2018年5月26日(土)-6月24日(日) 大槌秀樹「神々の撮影」
https://www.cyg-morioka.com/exhibition/2018051/index.html

 

 

 

Cyg 今回も根本さんと是恒さんのコラボ作品が登場するということですが、それはどんなものなのでしょうか?
根本 私は「SANZOKU」という実際に使えるアート作品としての食器のブランドをやってきました。SANZOKUは「山にこもるための食器」がテーマですが、是恒さんの作品は鯨など海の生き物を扱っているので、SANZOKUの海バージョンもありだよねという話になって、二人のコラボとして「KAIZOKU」をやろうという話になりました。

是恒 私が国内外で鯨の話を聞いて歩くうち、昔は鯨の骨が 食器や道具の材料になっていたものの、今は捕鯨が昔より盛んではなくなったので、使われなくなったと知りました。身近でなくなってしまった鯨の骨を再び身近にするような、骨をモチーフにした食器と、鯨のヒレや皮膚をイメージしたコースターのセットを考えています。

 

Cyg 楽しみです!今年の展覧会の他に、来年秋にもCygでの山形藝術界隈グループ展も計画していますので、引き続きよろしくお願いします。

 

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「山形藝術界隈友の会」はCyg店頭でもご入会手続き受付中

 

「山形藝術界隈友の会」は、「山形藝術界隈」の活動を支援するために発足された会員制の組織です。

支援方法として、サポーター(=会員)が活動資金の提供をする見返りとしてリターン(=作品)を入手する〈ファンディング〉の仕組みを採用しました。これにより、アート作品を手に入れることで誰でも気軽にアーティスト(=山形藝術界隈)の活動をサポートできます。

 

【リターンアイテム】

以下の3つのリターンアイテムを用意しています。友の会の入会にあたり以下のリターンメニューをお選びください。

各アイテムの詳細は山形藝術界隈友の会webサイトでもご確認いただけます。

https://shop.geijyutsukaiwai.org

 

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◎ 3,000円のリターンアイテム

壺ポスター(B3サイズ両面デザイン×2種)※サイズ h515 × w364 (mm)

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◎ 15,000円のリターンアイテム

壺 [小](根本裕子による小さなかわいい壺)※サイズ h110 × w100 × d100 (mm)

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◎ 300,000円のリターンアイテム

壺 [大](山形藝術界隈の作家達によるペインティングが施された豪華な大きい壺)※サイズ h400 × w350 × d350 (mm)

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※上記いずれも会員バッジ、会員限定パーティ招待付。壺はひとつずつ制作するため、それぞれ形・絵柄などに微妙な違いがございます。ご了承ください。

※Cygでは、「壺ポスター」「壺 [小]」は山形藝術界隈友の会入会後、即日お持ち帰りできます。

※その他、詳細等はお問い合わせください。

 


あおばくんのあたまん中 vol.5

〈取材・編集・構成・写真〉 大石倫子

 

 

[vol.1 演劇との出会い]

[vol.2 演劇でしか出来ないこと]

[vol.3 ストーリー以外の楽しさ]

[vol.4 Cygとの出会い]

 

 

vol.5 チャレンジすること

 

 

あおば:Cygが始まった時から、演劇のことは調査していたんですが?

 

しみず:まず、アーティストを調査するというところがギャラリーとして大事なところだと思うので、常に東北各地の情報を集めてはいるんですよね。それで盛岡では演劇が盛んなので、Cygがスタートしてからは意識的に観に行くようにしてました。広報の方法、チケットの価格帯、演劇に熱心な高校はどことか、どこの大学生が多いか、役者さんはどこで働いているか、とか。だんだんわかってきて。

 

あおば:なんか目の付け所が違いますね! そういうところが気になるんだ…

 

しみず:あはは!そうだよね。実はそういうのってすごく重要なんです。うまく表現活動を続けている人はどういう環境を作っているのか。

 

あおば:うわー。見られてるんだ〜。

 

しみず:いや、詮索しているとかではないですよ!今の状況を知ることで、次どうなればいいかを考えているんです。それにしても、演劇に関してはまだ分からない部分があるので、青葉くんからも色々と教えてもらいたいと思っているんですけれども。

 

あおば:いえいえ! こちらこそ、よろしくお願いします。

 

しみず:ところで、今回、『演劇ユニットせのび』の公演は、Cygというギャラリー空間での公演となるわけなんですが、劇場以外の場所を使った演劇っていうのはよくあるのかな?

 

あおば:都市部に行くと、結構普通だったりします。

 

しみず:パフォーマンスとアートという繋がりを考えたら、ギャラリーでやるっていうのは新鮮な印象ではあるけれども、かけ離れたものではないよね。

 

あおば:最初に清水さんから声をかけてもらった時は、『せのび』の今後の予定も決めていなかったですし、演劇ユニットとしてどうなって行くのかも未定で。ただ以前から、ギャラリー空間というのはすごく興味がありまして。

 

しみず:そう言ってもらえると嬉しいです。なんでギャラリー空間に興味があったのかな?

 

あおば:好きなアーティストの『たむらぱん』のライブを観に行ったことがあったんです。それがギャラリー空間に本人が描いた絵もあって、ライブもやって、合間に絵も描いたりして。

 

しみず:そのライブが印象的だったんですね。

 

あおば:ギャラリーはいろんなことができるし、観客も演劇よりも能動的に参加してるような感じがしたんです。演劇は、観客席、舞台と隔離されている感じがあって、受動的な部分もありますよね。

 

しみず:段差があるステージがあると、そこだけ別世界という感じはするよね。

 

あおば:僕はなるべくお客さんを巻き込んで心に触れるような演劇をしたいと思っているんです。ギャラリーでやれば、それが可能なんじゃないかなと。それでお話を頂いた時には、すごく前向きにイメージできました。お客さんを巻き込めるように、いろいろと工夫もできればいいなと思っています。

 

しみず:サイズもかなり小さいから、とてつもなく近いところで演技が行われるっていうところがドキドキするところでもあるよね。

 

あおば:最大で40名くらいですもんね。演じる側もどうなるのか、ドキドキします!

 

しみず:それにしても、今回の公演、ずいぶん面白いタイトルにしたよね。『どこかの国のアリス、あるいはなんとかランドのピーターパン』だもん! アリスとピーターパンの組み合わせの面白さというか。

 

あおば:アリスってすごい面白いなと思うところが、なんでもあり、な世界というか。その何でもありな世界が成立しているところがすごいなと。結局は、夢オチだから、何でもありなんですけれどもね。その、なんでもあり、な展開そのものが演劇に近いというか、演劇との親和性が強いんじゃないかなと。それはちょっと前から思っていたんです。

 

しみず:ちなみに、原作は文章で読んでみたの?

 

あおば:日本語の原作を読みました。映像で見ようかなと思ったんですが、変な先入観が入るのが嫌だなと思ったので、あえて観なかったです。

 

しみず:アリスというと、なんだか、周りにすごい振り回されるっていうイメージあるんだよね。


あおば:その印象を聞くと、今回うまくいったかも、と思えました! 今まで客観的な印象って聞いてなかったので。「アリスと言ったらこう!」みたいなイメージがそうであれば、今回の公演は楽しんでもらえると思います。

 

しみず:それにしても、何でそこにピーターパンもくっつけたのかが不思議で。オファーがあってから、そこから脚本書き始めたのかな?

 

あおば:アイデアは常に何本かあるんですが…アリスの世界はやりたいなと思っていたんですよね。そこに後から、ピーターパンを重ねた方が面白いなと思ったんですよね。

 

しみず:そこに重ねようと思ったのがすごいね。

 

あおば:自分の境遇を書くというのが相変わらずでして。大学四年生で、進路がまずわからない。将来どうなるのかもわからない。でも演劇をやりたい、就職している人もいれば、このままでいいのか?そんな気持ちもありつつ。

 

しみず:そういうのを決断しなければいけないタイミングだよね。

 

あおば:未来が全くわからないその状況が、アリスの次に何があるかわからない世界に重ねられるかな、というのがありまして。あとは、ピーターパンは永遠の子供というか、ネバーランドのピーターパンは年を取らない、というのが羨ましいよな、とか。自分を中心に置くと、アリスの世界とピーターパン世界が重なるかなと思いました。そこから書き出しました。

 

しみず:最初に会った時に、アイデア段階の話はしていたよね。

 

あおば:怖かったのが、第1回公演の『なくなりはしないで』とは、180°違う方向の劇なので、大丈夫かなっていうのがあって…

 

しみず:このアリスの案を最初に言われた時は、正直びっくりしました。『なくなりはしないで』の完成度が高かったので、これだとどうなるんだろうとか、前回のを期待している人もいるかなとか。何にしてもCygとしてどう宣伝していこうかな、というのは考えました。今となっては、青葉くんの幅を見せるっていう意味としては、2回目のプレゼンとしてはすごくいいんじゃないかなと思っています。前回は、本当にシンプルな作品だったので。

 

あおば:あーー良かったです!!

 

しみず:ただ、アリスとかピーターパンも有名だから、そのイメージと戦うっていうのは、かなり難しい部分もあるかとは思う。そういう意味で、舞台美術をイラストレーターの工藤陽之さんに頼めたらいいなというのは考えていました。青葉くんに会った時の最初の印象が、工藤ちゃんの印象とちょっと近いな、と。なんかね、どう生きていきたいかが似てる、っていうか…

 

初期の舞台美術のためのイメージ。登場人物のイラストや、実際の小さな模型でイメージを共有していった。

 

あおば:それどういう感じですか?

 

しみず:鋭さを持っているんだけれども、少年的な雰囲気というか。工藤ちゃんは結構年上なんですけれども。あと「せのび」っていう言葉とも、なんか合うかなって。

 

あおば:そんな風に見られていたんですね。

 

しみず:相性としてはそう思ったんです。もうひとつは今までCygを観てきた人にとって、演劇だから足が遠のくみたいな感じにしたくなかったので、今までCygで展示をしてきた人と組み合わせることによって、興味を持ってくれる人がいるんじゃないかと思ったんですね。舞台美術案を見せてもらった時は青葉くんどう思いました?

 

あおば:工藤さんすごく面白い人ですよね。出てくるアイディアが新鮮というか、ないものをくれるというか。そのアイデアを、頂いたことでさらに扉が開くというか、次々広がって行くというような感じがしました。ビジュアルで作品の雰囲気を汲んでいただけるので、こういう感じにしたいということが、イメージがしやすいんです。

 

しみず:工藤ちゃん自身も、舞台美術が初だから怯えています(笑)僕も舞台美術やってるからわかるんですが、なかなか平面の仕事をしている人にとっては分からないんです。サイズ感も違うので。別の頭を使う感じ。わかんないんです。でもビジュアルを作る立場だからこそ見える部分があるんですよね。実際の脚本に必要な要素もあるんだけど、そればっかりになっても面白くならないし。

 

あおば:そうなんですね。

 

しみず:工藤ちゃんはとりあえずイラストレーターなので、「とにかくイラストを描いて」ということをお願いしました。イメージを作って行くのが大事なので。ここからどうなるかは、いま工藤ちゃんの頭の中で起きているので、想像はつかないけれども。

 

あおば:いろいろ試作もしてくれたり、イラストもたくさん描いてもらってたりで、本当にどうなるのかが楽しみですよね。別の業種の方と組むのは面白いです。それだけで発見があって成長できるというか。

 

しみず:最後になりましたが、今回の舞台の目標ってありますか? こうなったらいいなみたいな。

 

あおば:僕が劇作をしている時に常に心がけているのは、観にきて頂いたお客様の心に、何か残って欲しいなということなんです。今回のテーマとしては…どこまで話していいのか難しいんですけれども、『子供心はいつまでも残しておきたい』っていうことなんですよね。それを観にきてもらった人の中に、子供の頃みたいな気持ちが起こって、外に外に広がっていけばいいな、と。

 

しみず:ネタバレになっちゃうので、どこまで言うか迷うよね。

 

あおば:それと、とにかく前回とは違う「演劇ユニットせのび」を楽しんでもらいたいです。

 

しみず:演劇用にできてないスペースなので、青葉くんがCygでやりたい!と思ってくれたというのも嬉しいことなんです。お客さんにぶつけてみて、反応を見たいというか。学生が主体となっている演劇って、外部の人がくるっていうタイミングはそんなにないと思うので、そこを崩してみたいんです。

 

あおば:本当にそうなんです。だから、ありがたいチャンスだなと思っています。チャンスを生かすためにも守りはもうやめました。 攻め攻めで!

 

しみず:いいね。とんがってなんぼです。出まくる杭になってほしいと思っています。せっかくの出会いなのでサポートしますね!これからもよろしくお願いします。

 

 

〈おわり〉

 

 

 

 

演劇ユニットせのび 第2回公演
『どこかの国のアリス、あるいはなんとかランドのピーターパン』

Cyg art gallery

 

2016年
11月3日(木)14:00-
11月3日(木)18:00-
11月4日(金)19:30-
11月5日(土)14:00-
11月5日(土)19:30-
11月6日(日)11:00-
11月6日(日)15:00-
※開場は各30分前 ​※上演時間は100分程度を予定

 

チケット:

学生1,000円(当日1,300円) 
一般1,500円(当日1,800円)

Cyg art galleryにて販売中

 

企画:シグと村田青葉

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あおばくんのあたまん中 vol.4

〈取材・編集・構成・写真〉 大石倫子

 

 

[vol.1 演劇との出会い]

[vol.2 演劇でしか出来ないこと]

[vol.3 ストーリー以外の楽しさ]

 

 

vol.4 Cygとの出会い

 

 

しみず: 「ホープモアホームレス』が大学2年生の夏ということで、その後も、「劇団かっぱ」さんで活動していたんですよね。コンスタントに脚本は書き続けてたの?

 

あおば:僕がいた頃は、脚本はほぼ僕が書いている状態でした。

 

しみず: なるほど。3年の夏に引退ということでしたけど、引退せずにっていう選択はなかったの?

 

あおば:実は、「劇団かっぱ」では、いつ頃からか引退制度っていうのがあるんです。

 

しみず: え、3年の夏で強制引退みたいな感じなんだ! 2年とちょっとで引退とはけっこう早いね。

 

あおば:強制引退と言ってしまうと、なんか強引な感じになりますが、3年の夏以降は研究や論文や就活で忙しくなる人が多くなるので、そこで一区切りつける形です。

 

しみず: そこから自身の活動について色々と考え出したんだ。で、青葉くん自身が主宰の劇団を作ったということですね。『劇団せのび』ではなくて、『演劇ユニットせのび』っていう名称はどうしてなの?

 

あおば:劇団っていうとなんだか怖いな、というのがありまして。劇団になると、その劇団の中で、色んなことを全てまかなっちゃうような気がするんですよね。

 

しみず: 確かに、舞台美術や照明や音響や衣装なども含めて、全部を劇団内でやっているイメージはあるかな。

 

あおば:演劇ユニットであれば、「この作品を一緒にどうですか?」ってよその人も、気軽に呼び込めるかなと思いまして。『劇団かっぱ』の時にはできなかった、やりたいことをやる!ってことを考えると、こういうスタンスの方が、色々なことに手を出せるんじゃないかなと。

 

しみず: それで、今年の春くらいに、その新しく立ち上げた『演劇ユニットせのび』として、旗揚げ公演をしたんだよね? 僕も観に行きました。

 

あおば:ありがとうございます。『E-pAck』というタイトルが付いていたのですが、3つの劇団が集まった公演だったんです。『演劇ユニットせのび』では、『なくなりはしないで』という作品を上演しました。

 

しみず: 『風のスタジオ』のチャレンジ企画でもあったんだよね? 各劇団がそれぞれ、短めの作品を公演するっていう。

 

 

2016年4〜5月に開催された「E-pAck」

「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」「劇団しばいぬ」「演劇ユニットせのび」の3団体で開催。せのびはこれが旗揚げ公演となった。

 

しみず: 脚本を書くときは自分の思考が如実にでるということだったけれども、この『なくなりはしないで』という作品では、どう反映されたんですか?

 

あおば:少し言いにくいことなのですが、最近、自分の祖母がちょっと認知症が入ってきてまして。そういう時期に書き上げたこともあって、おばあちゃんの認知症の話になってしまったんです。ほんとは違う脚本を書こうと思っていたんですけれども…。そうなってしまいました。

 

しみず: やっぱり自分の状況が反映されたということなんだね。

 

あおば:おばあちゃんがだんだん物忘れが激しくなってきて、自分のことも忘れられちゃうのかなって思ったんですよね。あと、前々から僕の頭にあったことなんですが、戦争とか震災とか大きなことも時間が経つと風化しちゃったり…そういうのと、なんだか重なりまして。そういう大きな話を、おばあちゃんと孫っていう個人的な話に、無理やり結びつけてみた作品なんです。

 

しみず: 僕が観て面白いなと思ったのは、それぞれのキャラクターに『忘れていく人』とか『忘れたい人』とか記憶に関したものを、当てていたよね? キャラクターとしてその役割を担っているのが、ぜんぶ自分を見ている感覚で、不思議で、良かったんだよね。

 

 

「なくなりはしないで」キャスト紹介。村田青葉の手描きによる。

 

あおば:それは意識的にやってみたことなんです。何かの現象や状況をキャラクターに置き換える、そういうのは演劇でしかできないかなと思って。

 

しみず: もちろん、青葉くんが取り入れている、前のシーンと次のシーンのセリフをつないでいく感じも、かなりでてきたよね。

 

あおば:そうですね。かなりシーンの切り替えが多くて、前のシーンの出演者が残ったまま、次のシーンになるような演出をしたりしましたね。

 

しみず: この『なくなりはしないで』が旗揚げの作品ということで、注目もされていたと思うけれども、手応えとしてはどうでしたか?

 

あおば:盛岡では、あんまり観られないタイプの演劇をやるぞ!って決めてまして。チームのみなさんには、「大すべりするかもしれないです、すみません」という話をしてあったんですけれども。思ってたよりもみなさんに評価していただけたので、驚きの方が大きかったですね。

 

しみず: そんな心配してたんだ。ちょっと意外。しかもこの旗揚げ作品が、市民演劇賞の戯曲賞に選ばれたんだから、すごいよね。

 

あおば:おかげさまで、ありがとうございます。審査委員の方からは、「これからも若者らしい作品を作ってください」っていう講評をいただいてますね。

 

しみず: 話題として僕の周囲では「せのびすごかった!」ってみんな言ってましたもん。それで僕がTwitterに「せのびがよかった〜」と書き込んだら、リプライをくれたんだよね?

 

あおば:公演の後に、エゴサーチをしてたんですよ。まず大事なのは顔を覚えてもらうことだなと思っていたのと、とりあえず「せのび」という名称も覚えてもらいたくて。

 

しみず: そうだよね。これからスタートという状況ではとても大切ですね。

 

あおば:せっかく一回観て「良かった!」と思ってもらったのに、日が経つにつれ忘れられるのも嫌だなと思って。積極的にアプローチを仕掛けようと。それで、感想を書いていてくださっていた皆さんに「ご来場ありがとうございます。今後も宜しくお願いします」というリプライを送ったんです。

 

しみず: そうでした。青葉くんが律儀で面白いなって思ったのは、僕が公演前からとっくにあおばくんの事をフォローしていたんだけど、リプライくれたとき「今までフォローしていただいていたのに、気がつかなくて申しわけありませんでした」って書いてあって。

 

あおば:あはは(笑)謝りましたね!

 

しみず: でもさ、Twitterってそういうもんじゃないかなぁと僕は思ってるから、なんか変わった人だなと、可笑しく思っていました。

 

あおば:いやぁ、一応、気になったもので!

 

 

Cyg art gallery 代表・清水真介

 

あおば:疑問なのですが、Cygさんで、なぜ演劇の要素を取り入れようと思ったんですか?

 

しみず: この Cyg art gallery は、まずギャラリーなので、今までは美術作品の展示販売がメインです。ただ、9月のコンテンポラリーダンサーの山手清加の第2回の公演は決まっていて、そういうパフォーミングアーツというものにも興味があって。そこからなだらかに続くように演劇に関する企画をしてみたいとCygの会議で僕が提案していたんです。「Cygは演劇の方向も観ているし、調査しているんですよ」というところをアピールしたいなと思っていたんです。

 

あおば:それは嬉しいことですね。

 

しみず: あと今年の10月に『架空の劇団』さんが『お寺三部作』の公演をすることが決まってたんですね。

 

あおば:清水さんが舞台美術、手がけましたよね。

 

 

架空の劇団 寺シリーズ三部作一挙上演「寺3」舞台美術:homesickdesign

 

架空の劇団…1990年旗揚げ。毎月新作を上映する「一月一本勝負」やアゴラ劇場大世紀末演劇展への参加等、精力的に活動するも1996年解散。架空の劇団という名前を消してしまうのが惜しく、2001年復活。寺で結婚話を描く「お寺シリーズ」や、産婦人科のロビー、保育園などを舞台とする、生活に根差した作品を得意とするくらもちひろゆきと、詩人をモチーフにした「月下の一群シリーズ」のほか、歌人や歴史上の人物などが登場する作品を得意とする盒饗鵑砲茲襦劇作家2人体制。 http://kakoo2001.wixsite.com/kakoo2001

 

 

しみず: そうです。舞台美術や宣伝美術は、Cygとしてではなく僕のもうひとつの仕事であるデザイナーとしての屋号で行っています。その話し合いのときに、『架空の劇団』の代表であるくらもちひろゆきさんから「Cygで架空の劇団の展示をやりたいんだよね」という相談されたんです。

 

あおば:演劇を展示する、そういうスタイルは珍しい試みですよね。

 

しみず: そう、演劇公演はイメージつくけど展示かぁ、と悩みました。どうやって収益を上げるかということもありましたし。結果としては、架空の劇団の豊富な公演歴とその映像の上映会を行うことでバランスをとりました。

 

あおば:そのへんの調整は難しそうですね。

 

しみず: 収益の調整は仕事なのでとにかくやるしかないので大丈夫なんだけど、、、。実はCygとして、盛岡の文化として定着している演劇を、どう見せていけばいいのか、どう取り組めばいいのかが、まったく分からなかったんです。今も分からない!

 

あおば:分からないけど、やりだしたんですね?

 

しみず: 『架空の劇団』の件もあるし、青葉くんとのTwitterでのやりとり、その前の様々な演劇関係者とのつながりの流れもあって、このタイミングで何かできるかも?と。勘ですね。

 

あおば:なるほど。

 

しみず: そうして奮起して、演劇関係者で、僕が興味がある数人に話を持ちかけてみたんです。青葉くんがその一人だったというわけです。Cygで何かしてみませんか?一度会いませんか?みたいな感じで連絡したよね。

 

あおば:はい、びっくりしました。それが今年の6月くらいでしたね。

 

 

 

〈つづく〉

 

 

 

 

演劇ユニットせのび 第2回公演
『どこかの国のアリス、あるいはなんとかランドのピーターパン』

Cyg art gallery

 

2016年
11月3日(木)14:00-
11月3日(木)18:00-
11月4日(金)19:30-
11月5日(土)14:00-
11月5日(土)19:30-
11月6日(日)11:00-
11月6日(日)15:00-
※開場は各30分前 ​※上演時間は100分程度を予定

 

チケット:

学生1,000円(当日1,300円) 
一般1,500円(当日1,800円)

Cyg art galleryにて販売中

 

企画:シグと村田青葉

保存保存

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あおばくんのあたまん中 vol.3

〈取材・編集・構成・写真〉 大石倫子

 

 

[vol.1 演劇との出会い]

[vol.2 演劇でしか出来ないこと]

 

 

vol.3 ストーリー以外の楽しさ

 

 

しみず:演劇でしかできないことをしたい、ということですけど、具体的に取り入れている手法ってありますか?

 

あおば:僕がその頃からずっとやり続けている演出があるんです。映画だとシーンを繋ぎ合わせるのってすごく簡単で、例えば、家の中から、家の外のシーンに変えるとしたら、パッと画面が変わりますよね? これが演劇だと難しいんです。僕はそこで、言葉を重ねるという行為をよくしていまして…

 

しみず:具体的にはどういう感じなんだろう?

 

あおば:前のシーンの最後のセリフと、次のシーンの最初のセリフを、同音異義語というか、そういう風に重ねているんです。

 

 

台本の一部。

 

しみず:あ、うんうん。旗揚げ公演の『なくなりはしないで』を観たけれど、そのシーンの切り替えがとても多い、という印象ですね。出てくる人が色々いるから、その切り替えがすごく面白かったんだよね。ちょっとドキッとするというか。無理やりずらされる印象というか。

 

あおば:あーー嬉しいです。

 

しみず:前のシーンの出演者がそのまま残っているのに、次のシーンになったりするよね。シーンが変わったっていう瞬間がちゃんと分かるっていうか。

 

あおば:そうなんですよね。僕が観て衝撃を受けてきた演劇にも、そういう要素が入っているものが多いんです。そういう言葉で繋げるっていうのも、演劇でしかできないことかなと思いまして。なので、『ホープモアホームレス』以降も、ずっとやり続けているんです。

 

しみず:やり続けているっていうことは、もちろんCygで上演される作品にもそういう要素が入っているんですか?

 

あおば:『不思議の国のアリス』は、言葉遊びが有名な作品ですよね。僕は日本語に訳した原作しか読んでないんですが、日本語でとても遊んでいるなぁと思いまして。これはちょっと、僕も挑戦しないといけないなと。言葉で色々遊んでみています。

 

しみず:あと作品によっては、一人に何役もやらせたりするよね? これって混乱を狙ったりする効果なんですか?

 

あおば:トリッキーにしたいというよりも、純粋に人が足りてないというか、人がたくさん出てる方が面白いなという思いがありまして。それと、役者のみなさんを見ているといろんな役をやらせたいって思っちゃうんですよね。一 度、「劇団かっぱ」の夏公演の時に、キャストが18人だったけれども、80役くらい作っちゃって。人によっては5役くらいとかあったり。

 


配役表。一人何役も配役されている。

 

 

 

しみず:80役!?観てる側も混乱しそう。いやぁ、それは面白いね。でも、ぜんぜん想像つかない(笑)

 

あおば:例えば、テレビクルーなら腕章つけるとか、子供なら紅白帽かぶるとか、本当にそれだけで、キャラクター分けるような感じなんです。一応、着替える時間とか計算しましたけれども、慌ただしかったと思います。

 

しみず:演劇をはじめて経験する人はストーリーを観に来る人がほとんどだと思うけれども、こういう脚本もあるんだってわかると、見方が変わるよね。

 

あおば:演劇にもいろいろありますからね。

 

しみず:オチがあるから面白いとかではなくて、進んでいく中で、どんどん話が厚みを増していって、一番厚い状態で終わるというか。そういう感じがいいんだよね。積層していく感じというか。そこが一番面白いと思う。

 

 

 


しみず:話が戻るんですが、このホープモアホームレスの時は、審査員特別賞ということなんですが、審査員からの劇評みたいなのは直接されたんですか?

 

あおば:していただきました。印象深かったことは…演出に関してはありがたいことに結構褒めてもらえたんですけれども、悔しいなと思ったのは、「結局個人の問題に収束している」ということを言われまして。

 

しみず:なるほどね〜。

 

あおば:先ほども言ったんですが、僕は、僕発信の脚本しか書けないっていうのがあるんです。この『ホープモアホームレス』の時も、僕が「夢をみても結局努力しなきゃだめ!って思った」っていう個人的な主観が、作品の中にも出ちゃってたみたいなんです。

 

しみず:舞台に限らず創作物を見たとき、作品から個人的な主観を感じたりすると、「なんだか嫌だな」と感じてしまうことあります。でもやはり若い時はストレートな気持ちが出てしまいますよね。

 

あおば:確かにまだ甘かったんです。社会性を帯びているようなテーマかと思っていたら、「結局、個人の問題じゃん」みたいに言われてしまいまして。

 

しみず:人に見せる以上は、その方が評価されるのかもしれないね。

 

あおば:東北学生演劇祭のテーマが、学生らしさというのと、社会性というか、「今この演劇をここで発信する意味」みたいなのを重視している部分はあるそうです。

 

しみず:まぁ、学生らしさと社会性を同居させるっていうのは、ちょっと難しい感じはするけれどね。そこが良い塩梅のバランスの作品を探しているんでしょうね。

 

あおば:そうなんですよね。その両立が難しいんですが、「他の上演作品よりも社会性はあったのに、着地点がちょっと」みたいな感じのことは言われました。未熟さはあったものの希望が持てる講評をいただけてうれしかったです。

 

しみず:ところで、その大会で大賞を取ったのはどこだったんですか?

 

あおば:大賞は東北大学さんでした。

 

しみず:東北大学さんは、同じ大学生としてどういう感じでした?

 

あおば:完成度が非常に高かったですね。丁寧でした。ぼくたちの作品は「雑!」ということも講評で言われまして。

 

しみず:それは自覚はあるの? これはちょっと雑かなって。

 

あおば:いま観ると、正直、雑だなって思いますね。でも審査員の皆さんには、結構気に入っていただいたというか、好感を持ってはもらえました。

 

しみず:審査員特別賞だものね。脚本になにか可能性を感じたのかな。

 

 

〈つづく〉

 

 

 

 

演劇ユニットせのび 第2回公演
『どこかの国のアリス、あるいはなんとかランドのピーターパン』

Cyg art gallery

 

2016年
11月3日(木)14:00-
11月3日(木)18:00-
11月4日(金)19:30-
11月5日(土)14:00-
11月5日(土)19:30-
11月6日(日)11:00-
11月6日(日)15:00-
※開場は各30分前 ​※上演時間は100分程度を予定

 

チケット:

学生1,000円(当日1,300円) 
一般1,500円(当日1,800円)

Cyg art galleryにて販売中

 

企画:シグと村田青葉

 

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あおばくんのあたまん中 vol.2

〈取材・編集・構成・写真〉 大石倫子

 

 

[vol.1 演劇との出会い]

 

 

vol.2 演劇でしか出来ないこと

 

 

しみず: 東京に演劇を観に行くようになった、ということだけれども、東京にはそれこそ無数に劇団ってありますよね。観に行く劇団はどういう風に選んだの?

 

あおば :一番最初に外へ演劇を観にいったのが、先ほど話した「サマータイムマシーンブルース」を上演した『ヨーロッパ企画』という劇団で、京都まで観に行きました。それが一年の夏くらいですね。あとは、一年の冬に、高校の先輩で演劇活動をしている方から、東京の舞台でエキストラと手伝いをしてくれないか、という話をいただきまして。東京に1、2ヶ月くらい滞在していたんです。

 

しみず:まとまった長い時間で都市部の演劇を覗き見できたんですね、それは貴重な体験ですね。

 

あおば :そうなんです。そのとき、稽古終わりとかのタイミングで、公演をしている小劇場とかに行きました。最初は有名なところで、岸田國士戯曲賞(※1)という演劇でいう芥川賞みたいな戯曲作家にとっての登竜門となる賞があって、それを受賞した方の作品とかを最初に観て。あとはその演劇に行った時にもらったチラシの中から面白そうなのを選んで観たり。一回行くとそういう風にどんどん情報が入ってくるんです(※2)

 

(※1)岸田國士戯曲賞…劇作家・岸田國士の業績を顕彰するとともに、若手劇作家の育成を目的に白水社が主催する戯曲賞。新人劇作家の登竜門とされ、「演劇界の芥川賞」という異名を持つが、ベテラン作家の受賞も多い。参考:wikipedia

 

(※2)チラシの折り込み…パンフレットにたくさんのチラシが挟み込まれる。その劇場やその地域で行われる演劇情報を知ることができる。 

 

しみず:その時は勉強になったという感じ? それとも圧倒された?

 

あおば :観ていたまさにその時は圧倒されていましたが、帰ってゆっくり反芻したりしてどう自分のものにしていけるかに時間をかけました。実は最初の脚本の感想を先輩方に聞いた時「演劇じゃなくてもいいじゃん」ってことをよく言われてまして。

 

しみず:小説でもいいじゃんってこと?

 

あおば :小説でも映画でもいいって言われてました。その時は、「そっかぁ」くらいにしか思ってなくて、ピンと来てなかったのですけれども。外で芝居を観ていたら、「あぁ確かに、これは芝居でしかできないな」ってことがあるんだなって感じました。

 

 

 

しみず:芝居でしかできないことって、それは例えばどういうことなのかな?

 

あおば :僕が演劇って面白いんだよって事を友人に伝える時によく話すことがあるんですけれども…

 

しみず:うんうん。

 

あおば :岸田国士戯曲賞受賞者のノゾエ征爾さん作・演出の「サニーサイドアップ」という舞台での演出なのですが、主人公の父親が癌で余命が短いという話をしていた後に、天井から物がドサって落ちてきて、実はそれを広げると喪服なんですよ。主人公がその喪服を着た瞬間に「父親が死んだ」ということを表現していている、という訳なんですが。

 

しみず:おお確かにそれは小説でも漫画でも表現できないね。いや表現しても良いのかもしれないけど、伝わりにくくなっちゃう。

 

あおば :ですよね。それまでの背景と、ひとつの出来事や行為だけで、何が起きたかセリフで言わずに表現できるんだ、ということに気づきまして。面白いなぁと。

 

しみず:面白いし、不思議だね。舞台という場所で実際その状況を目にしている方が、けっこう突飛なことが起きても人は何を意味しているか判断できるんだ。演劇にしかできないことや、演劇にしかできない体験が、演劇の面白さであるということですね。じゃあ、外で色々観たことで先輩に言われてた意味がわかったという感じ?

 

あおば :そうなんです。そこで、ようやく意味がわかったという感じでした。それ以降から、“演劇でしか出来ないこと” にこだわって、脚本を書くようになりました。ただ、実際にそれができる、というところに到るまではまた時間がかかりました。

 

しみず:自分が描きたい表現したいものに、そういった演劇ならではの表現方法をどう組み込むのか、ということだよね?

 

あおば :また一つの壁という感じでした。

 

しみず:そこから、さらに脚本作りに磨きがかかったんだね。それで『劇団かっぱ』の時に、『第1回のとうほく学生演劇祭』(※3)っていうのがあって、それで『ホープモアホームレス』という作品で、審査員特別賞を取りましたよね?

 

(※3) とうほく学生演劇祭…せんだい演劇工房10-BOX で行われる東北の学生劇団の祭典。審査員による各賞の審査、講評も行われ、優秀な成績を納めれば、京都で行われる全国学生演劇祭への出場権を得ることもできる。

 

あおば :はい、脚本も演出も、両方を手がけた作品は、これが初めてでした。2年生の夏ですね。

 

しみず:東北の劇団が集まった大会みたいだけれども、メンバーが全員学生じゃなければいけないのかな?

 

あおば :学生が主体の劇団だったら、参加可能ということでしたね。この年は7組出場していました。

 

しみず:まず『ホープモアホームレス』ていうタイトルが、すごく興味をそそられるよね。どんなストーリーなんですか?

 

2014年公演「ホープモアホームレス」メンバー。前列中央が青葉。

 

あおば :説明が難しい作品なんですが…。普通の会社員になることを夢見た主人公が、気付くとホームレスになっていた、というところから劇が始まります。そしてその町では、ホームレスを救うことをマニフェストにして市長選に立候補している候補者がおりまして、この2つが接触をして話が進んでいく訳なのですが。

 

しみず:ぱっと聞きは良い話っぽいですが、そうもいきませんよね。笑

 

あおば :はい、そうはいきません(笑) このホームレスの方々は、「やった、俺たちも人権を確保できる!」みたいな考えでいるんですけれども、市長としては、最終的には「ただこいつらを利用してやる」としか考えていない、という描き方をしました。テーマとしては、「自分たちで何も努力していない奴が、夢ばっか見てんじゃねーぞ」、みたいな話です。

 

しみず:ははは! それってどっちから見て? ホームレス側??

 

あおば :いや、市長がホームレスに、「夢ばっか見てんじゃねーよ」っていう(笑)

 

しみず:なるほどね。何も努力せずに、っていうことだよね。誰かチャンスくれないかな、みたいなね。

 

あおば :自分の脚本・演出の時って、自分の今の環境というのがダイレクトに出ちゃうんですよね。

 

しみず:ヘーーーーなるほどーーーー! 20歳の時一体何が? そういうの聞くの好きです。

 

あおば :いやぁ、東京とかに演劇を観に行っていた時期だったもので。自分と活躍している人を比べて見ていて、「何で自分はあそこまで出来ないだろう」と、その差を感じることが多かったんです。でも冷静に考えたら、「そっか、何にもしてないからだよなぁ」と思ったんです。だったら努力するしかないよなぁって。

 

しみず:そこがホームレスに投影されている。

 

あおば :ホームレスと市長どちらにも重ねていたのかもしれません。でもひとつ分かっていたことが、とにかく僕はやっぱりまだまだ力がなくて、演劇の世界にはすごい方たちが上にたくさんいるんだ、という悔しさとか憧れとか焦りとかみたいな感情があったんだと思います。

 

〈つづく〉

 

 

 

 

演劇ユニットせのび 第2回公演
『どこかの国のアリス、あるいはなんとかランドのピーターパン』

Cyg art gallery

 

2016年
11月3日(木)14:00-
11月3日(木)18:00-
11月4日(金)19:30-
11月5日(土)14:00-
11月5日(土)19:30-
11月6日(日)11:00-
11月6日(日)15:00-
※開場は各30分前 ​※上演時間は100分程度を予定

 

チケット:

学生1,000円(当日1,300円) 
一般1,500円(当日1,800円)

Cyg art galleryにて販売中

 

企画:シグと村田青葉

 

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あおばくんのあたまん中 vol.1

 

〈取材・編集・構成・写真〉 大石倫子


11月3日〜6日にわたって上演される『演劇ユニットせのび』の『どこかの国のアリス、あるいはなんとかランドのピーターパン』。これはシグ・アートギャラリーで演劇を上演するという初の試みでもあります。
この『演劇ユニットせのび』を率いるのは、現役大学生の村田青葉。21歳で盛岡市民演劇賞『創作戯曲部門賞』を受賞したという注目の演劇人です。そんな彼に、演劇にまつわるあれこれ、考えていることなどを、ざっくばらんに聞いていくインタビューをシリーズでお届けします。
聞き手はCygの代表であり今回の企画を担当する清水真介です。

 

 

vol.1 演劇との出会い

 

 

しみず:青葉くんこんにちは!今日はよろしくおねがいします。といってもいつもやりとりしてますけどね。お世話になってます。

 

あおば:あらためまして演劇ユニットせのびの代表の村田青葉です。こちらこそお世話になってます。インタビューってはじめてです。ドキドキしますね。

 

しみず:Cygとしてもインタビューは初めての試みなので、僕も緊張してます。

 

 

しみず:青葉くんが演劇と関わったきかっけから聞きたいのですが、高校の時に演劇をはじめたんですか?

 

あおば:高校では演劇とは無縁の応援団でした。演劇は大学から始めました。

 

しみず:演劇に関することはやってなかったんですね。それは意外。そして演劇に触れてたった4年目とはびっくりです。なんで大学から演劇を始めようと?

 

あおば:大学のサークルオリエンテーリングで『劇団かっぱ』(※1)の文字をみて、演劇って面白いかもなぁと思ったんです。スポーツも好きだったので迷いましたが。

 

(※1)劇団かっぱ…岩手大学の学生で構成される演劇サークル。今年で35周年を迎える長い歴史を持つ。毎年、夏期、秋期、冬期の定期公演を盛岡市内のホール等で発表。定期公演以外にも、4年生が中心になり卒業記念公演なども行っている。盛岡演劇界では劇団かっぱ出身のOB・OGも多く活躍している。

 

しみず:なんで面白そうと思ったんですか? 演劇の世界に足を踏み入れる人にはどういうきっかけがあるのか気になります。

 

あおば:実は好きな映画があって『サマータイムマシーンブルース』っていうんですけれども、小学校の頃にその映画を見て、ずっと心に残っていました。それの原作が演劇であることを知って、高校時代にはその劇団の舞台のDVDを取り寄せて観ていたりして、演劇って面白いなぁって思っていました。

 

しみず:面白いと思えたということは、演劇にハマる性質が青葉くん自身にあったあったんですかね?

 

あおば:そうですね、目立ちたがりだという自覚がありますし、常に面白いことをやりたいと思って生きている、というのもあります。高校の時は応援団もやっていたので人前に出るのは苦じゃないというか、むしろ好きというか。だから演劇っていいなって思っていたのだと思います。

 

しみず:目立ちたがり、ということは最初は演じることに興味があったとか?

 

あおば:演じるのはもちろん興味がありました。それと同じくらいに書く行為にも興味があった気がします。中学生の頃から小説を読むのも好きだったんですが「書けたらいいな」とか「書きたいな」とか思っていました。演劇だと戯曲(※2)を書くという行為があるので、演劇サークルに入れば自分が書いたものをみんなに見せられるかもと。そういう動機もありましたね。

 

(※2)戯曲…演劇の上演のために執筆された脚本や上演台本のかたちで執筆された文学作品のこと。さらに演劇の上演を前提とした場合でない文学作品もこれを指すことがある。 参考:wikipedia

 

しみず:そうして入団して活動が始まったわけですね。学生劇団である劇団かっぱはどのくらいの頻度で公演があるんでしょうか。

 

あおば:年に3〜4本の公演があります。休みの期間もあるのですが、公演のだいたい3ヶ月くらい前に脚本を決める会議があって、そのあとオーディションで役を決めて、そこから2ヶ月くらい稽古をやって本番という感じですね。

 

しみず:結構なスパンであるんですね。青葉くんはまず最初は演じる側、役者としての活動となるんですよね。

 

あおば:7月の夏公演に役者として出ました。この夏公演は、3年生の引退公演と1年生の顔見せ公演を兼ねているんです。

 

 

 

演劇ユニットせのび代表・村田青葉

 

 

しみず:わぁ、あっという間に人前に出ることになるんですね。中学とか高校から演劇やっている人も盛岡には多いイメージですよね。実際、盛岡の演劇の世界に入ってみて戸惑ったりしなかったですか?

 

あおば:高校からやってなかったという「遅れ」があったぶん、頑張らなきゃ、という気持ちは強かったです。演劇独特の緊張感はもちろんありましたが、苦ではありませんでした。僕が特殊なのかもしれないですね。映画も小説もお笑いも大好きで、且つ人前に出るのも苦じゃないっていう性質だったので。

 

しみず:強いなぁ。いや、強いとか特殊だというよりは、青葉くんは演劇を楽しんでたんでしょうね。戯曲はいつごろ書き出したんですか?

 

あおば:夏公演の活動をしながらも「書きたい」という気持ちが強く湧いてきていました。身近に書いている先輩方がいたのでどういう方法で書けばいいのか聞いたり、それまで積極的に見ていなかった戯曲というものを読むようにしたりと、書くための勉強を自分なりに進めていきました。そして11月の秋公演に向けた脚本(※3)を完成させたんです。処女作ですね。

 

(※3)脚本…_浸、何処で、誰がなどを説明する柱書き 台詞 L鮗圓瞭阿やしぐさ、装置や音楽や照明に関する指定が書かれたト書き 大きくこの3つで構成された、演劇の上演のための設計図的役割を担うテキスト。 参考:wikipedia

 

しみず:それを、脚本を決める会議に出した、ということですね。

 

あおば:そうです。ありがたいことにその会議で秋公演の脚本として選ばれたんです。

 

しみず:おお! サークルの中とはいえ人生で初めて書いた戯曲が採用は嬉しいよね! 戯曲を書いた人が演出(※4)もするんですか?

 

(※4)演出…戯曲をもとに、俳優の演技はもちろん、照明・音響などの効果や装置、美術を利用して、作品全体をつくり上げていく役割、人のこと。同じ戯曲でも、演出家の解釈によって違う作品になる場合が多い。少人数でつくることの多い演劇では、幅広い視野で舞台を総合的に組み立てていく力が必要になる。 参考:wikipedia

 

あおば:通例だとそうなんですが、まだ演劇のこともよくわかってなかったので、演出家は2年の先輩がすることになりました。

 

 

 

2013年公演の岩手大学劇団かっぱ「拝啓、七名様。」この時の演出家・菊池淳也は、今回は役者として出演。

 

 

しみず:はじめて紙の上の脚本の状態から、演劇という形の作品になった、その手応えはどうでした?

 

あおば:実はですね、すごい自分の中で納得がいってないというか、悔しかったというか。会議までして選んでいただいたので、自分で自分の脚本をつまらないとは言えないんですけれども、自分としては出来の良くない脚本だなぁと思ってまして。

 

しみず:自分が「良い」と思って書いたはみたが、すぐに「良くない」と思った、と。

 

あおば:演劇という形になると自分の脚本の未熟さが嫌でもはっきりと見えたという感じです。処女作だからしょうがないのかもしれないんですが。

 

しみず:自分の創りだしたものに対して、客観性を持ってダメだと気付ける人と気付けない人がいるよね。青葉くんは気づけたんですね。

 

あおば:気付きました。かなり悔しかったです。とにかくその悔しさから本格的に戯曲を書くための勉強をはじめました。先輩方に意見をもらうのはもちろん、プロの戯曲を読んだり、有名な演劇のDVDを積極的に見るようにしました。それから東京にも夜行バスで行って演劇を見るようにしていきました。失敗という言い方だと語弊があるかもしれないのですが、最初に苦い経験をしたことで自分がより演劇にハマっていったんだという気がしています。

 


〈つづく〉

 

 

 

 

演劇ユニットせのび 第2回公演
『どこかの国のアリス、あるいはなんとかランドのピーターパン』

Cyg art gallery

 

2016年
11月3日(木)14:00-
11月3日(木)18:00-
11月4日(金)19:30-
11月5日(土)14:00-
11月5日(土)19:30-
11月6日(日)11:00-
11月6日(日)15:00-
※開場は各30分前 ​※上演時間は100分程度を予定

 

チケット:

学生1,000円(当日1,300円) 
一般1,500円(当日1,800円)

Cyg art galleryにて販売中

 

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